
(1998年9月5日撮影)
10年前の夏。
奄美大島周辺のサンゴ礁で、大規模なサンゴの白化現象が発生した。台風の接近はなく、連日、快晴ベタ凪ぎの大浜海浜公園。海水温が30℃を超える日が1週間ほど続いた8月下旬、リーフ上のサンゴが、真っ白になった。陸上から見ても、まるでルーフ上に砂地ができたかのように、白化したサンゴが確認できた。潜ってみると、水深5mまでのサンゴは、ほぼ全て白化しており、数週間で、枝サンゴやテーブルサンゴなどのミドリイシ類のサンゴは、死滅した。
10年前には、あと10年もすれば、元の状態に回復するのでは、と考えていたが、その後のオニヒトデの大量発生によって、深場(礁斜面下部)のサンゴまで壊滅状態になってしまった。現在、大浜では、リーフエッジ(礁縁)付近に、オニヒトデ駆除によりなんとか保全できた98年の白化以降に定着したサンゴが成長を続けている。リーフ内(礁池)は、98年に死滅した枝サンゴが堆積している状態で、新たなサンゴの加入が少なく、10年前の状態に回復するには、数十年かかるかもしれないし、もう、回復できないのかもしれない。幸い、1998年以降、奄美大島では、大規模なサンゴの白化現象は発生していないが、気候変動による影響も懸念され、いつ発生してもおかしくない状態である。
ここ10年で、奄美大島周辺のサンゴ礁は、大きな撹乱を受けた。それ以前も、日本復帰後や1970年代にオニヒトデによる食害、赤土流出、生活排水等による撹乱を受けてきたが、ここ10年の白化とオニヒトデで受けたダメージは甚大である。10年前から、回復を見届けたいと思い、サンゴ調査に携わってきたが、毎年のように、状況は悪化してきたような気がする。やっと今年、オニヒトデの大量発生が終息に向かい、太平洋側の礁斜面では、健全なミドリイシ類が成長を続けている。
10年後、島のサンゴ礁は、どうなっているのだろう?
おそらく、夏場に、時化やすい太平洋側の礁斜面から順調に回復し、東シナ側の礁縁や大島海峡中心部から徐々にサンゴが回復していくのだろう。リーフ内では、白化やオニヒトデに比較的強いコモンサンゴ属やハマサンゴ属のサンゴが優占していくだろう。沖縄本島西海岸で、オニヒトデが大量発生してしまったら、過去2回のように、奄美でも大量発生するのだろうか。1998年の白化で、比較的被害が少なく健全なサンゴが多く生存していた加計呂麻島周辺のサンゴ礁にオニヒトデ幼生が大量に着生し、壊滅状態に追い込んだように、現在、健全なサンゴ礁が、一番危ないのかもしれない。個人的には、何事もなかったかのように、見飽きる程のサンゴが続く以前のサンゴ礁になっていたらと願わずにはいられない。。。