この度、このような名誉ある賞を頂き、恐縮しております。当初、受賞のお話をいただいた際、私はまだまだ実績も無く、想定外のもので、果たして新聞読者の方々に受け入れてもらえるだろうかと心配しておりましたが、先輩方や友人からの激励や助言も頂き、謹んで受賞させて頂く事にいたしました。
みなさまご存知のように、私が取り組んでいる活動は、私個人だけでは、到底できるものではございません。多くの方々の協力による賜物であります。
奄美大島には、海洋生物の調査・研究機関がありませんでしたが、1998年の夏に発生しました大規模なサンゴの白化現象を目の当たりにした事が、私が、調査・研究を進める大きな切っ掛けとなりました。当時、開館直後の奄美海洋展示館に勤務しており、目前にひろがる大浜海岸のサンゴが白化し、次々と死滅していく過程をとにかく記録しておりました。その後、日本中の多くの研究者の方々にサポートしていただき、サンゴ礁調査を進める事ができました。
調査に関しましては、白化からの回復状況を目的としておりましたが、2000年から2007年にかけてのオニヒトデ大発生により、サンゴは残念ながら減少の一途を辿りました。そのような状況下でも、ダイビング事業者の方々とオニヒトデの繁殖生態の解明や保全海域での試験的な駆除を実施し、今日では行政事業によるサンゴ礁保全対策事業も実施されるようになっております。現在のサンゴの状況ですが、2008年にオニヒトデ大発生は収束し、嬉しい事に多くの海域でサンゴが勢いよく回復してきております。
長年の懸念事項でありましたウミガメ調査ですが、行政のウミガメ調査は、奄美大島全域の3割程度しか調査されておらず、2012年から陸路の無い浜を含め、全域での調査を実施しています。調査は、我々の海洋生物研究会だけではなく、環境者や国直集落、民間のどれんキャンプ場など多くの方々で分担し、実施しております。昨年は、その取り組みが評価され、奄美市においてウミガメの全国会議である日本ウミガメ会議を開催する事ができました。
冬期に繁殖のため来遊するザトウクジラも、年々出現頭数が増加しており、昨シーズンは出現頭数327頭、うち個体識別が過去最多の170頭になりました。ホエールウォッチング利用者も倍増し、新たなエコツアーとして、地域に貢献できたらと考えております。
数年前の南海日日新聞さんの特集記事の取材におきまして、興さんにとって奄美とは?との問いに、「嬉しいプレッシャーです」と答えました。しかしながら、現在取り組んでいる外来水生生物も考慮しますと「嬉しいプレッシャーどころか、パンドラの箱を開けてしまった」感じもしますが、これからも目の前にある課題を、ひとつひとつ解決していけたらと思います。
みんなでこの受賞をお祝いしたいと思います。本日は誠にありがとうございました。