沖縄県名護市で開催された沖縄ザトウクジラ会議(主催:沖縄美ら島財団)に参加してきました。
東京海洋大学の加藤秀弘教授による基調講演「増えゆくザトウクジラとどうつきあうか?」では、ホエールウォッチングは少なからず資源(鯨)に影響を与えるので、科学的に妥当な管理(ガイドライン)が必要であり、影響を極小化させるには、全参加者が守らなければ意味がないとの説明がありました。
美ら島財団との調査結果から、沖縄海域におけるザトウクジラで来遊個体数推定で年間増加率が16.9%であり、現時点でも琉球捕鯨前の40〜60%ではという明るい発表もありましたが、一方で、鹿児島海域での高速船との衝突事故や鯨類との衝突リスクを減じるため水中音響発生装置(UWS)の研究もあり、ザトウクジラ増加による差し迫ったリスク管理として、ヨットや高速船、ウォッチング船との衝突回避、限定的ザトウクジラの行動コントロールが必要との指摘がありました。
奄美関係では、極近年の奄美群島近海での定常的出現状況を考慮すれば、出現頭数以外にも生息域自体の拡張が起こっていると考える方が妥当とのことでした。
座間味島ホエールウォッチング協会事務局長の大坪弘和氏の講演では、1986年のある日阿嘉島の西で2頭のザトウクジラが現れてから、しばしば見られるようになり、現在のホエールウォッチング体制が構築されていった経緯の紹介がありました。現在高台2箇所から探索しているとのことでした。親子鯨に関しては、世界的にも特別なルールがあるところがほとんどで、基本的には親子クジラを見に行かない船が多く、ウォッチング船全体で午前・午後それぞれ30分という制限時間と500m以内を進入禁止水域としているとのことでした。
美ら島財団総合研究センターの岡部晴菜氏の講演では、1950〜1962年に沖縄で約800頭のザトウクジラが捕獲され、1981年に現美ら海水族館沖で親子クジラを発見し、1991年から慶良間諸島、2006年から本部半島で調査を開始し、調査海域において年間識別数は200〜400頭で推定で約1000頭が沖縄海域に来遊し、増加傾向がみられるとのことでした。奄美大島での識別個体40頭のうち33頭が沖縄識別個体と一致したとの発表もありました。国際的な照合結果(SPLASH)から、奄美・沖縄に来遊する個体群の摂餌海域はロシアであろうという説明もありました。
パネルディスカッションや質疑応答では、ガイドラインやグランドルールは簡単な守れるものに、ヘジテーション(躊躇)を防ぐためのルールに、進入禁止区域は音響調査の結果から300m以内でもいいのではという意見もありました。ホエールスイムについてやはり危険で、以前よりザトウが人慣れしているという意見もありました。
奄美大島においてもザトウクジラ来遊数は増加傾向にあり、過度なストレスを与える事によるポジションシフトを引き起こさない為にも、奄美クジラ・イルカ協会の体制強化と皆が守れる自主ルールの周知に努め、持続的なホエールウォッチングを目指したいと思います。
皆様お世話になりました!