
多くの皆様にご参加いただきありがとうございました。
黒潮生物研究所の岩瀬文人さんによるサンゴ食害生物とその対策と題した基調講演では、サンゴ礁保全のあるべき姿と酢酸注射によるオニヒトデ駆除の最新知見を発表していただきました。オニヒトデ駆除数が大事ではなく、いかにサンゴを保全できたが重要であると強調されていました。また酢酸注射法がより安全ではあるが、刺傷の危険は残るというお話もありました。サンゴの保全については、白化・病気に対しては記録、赤土流出に対しては原因究明、サンゴ食害生物に対しては、守るべきサンゴ群集がある場合は、駆除を繰り返し、結果のモニタリングが必要であり、適正なオニヒトデ分布密度は2個体/15分観察が駆除効果の判定の基準になるとの事でした。
群島全域で取り組んでいるサンゴ保全海域での駆除と継続したモニタリングによる活動発表もありました。
奄美大島につきまして、興の方から、奄美群島のこれまでのオニヒトデ駆除数推移やサンゴ礁保全対策事業によるモニタリングおよび駆除の概要説明、瀬戸内町海の守る会のリーフチェックの報告をしました。
徳之島町の工房海彩代表、池村茂さんから徳之島の母間では移植サンゴが成長しているとの報告がありました。ヤコウガイ細工体験や稚貝放流とともに子供達へのサンゴ礁観察会も実施しているとのことでした。
沖永良部珊瑚守り隊の中野幸一さんからは守り隊のボランティア駆除の活動報告があり、平成14年から4792匹のオニヒトデ駆除をし、メンバーの方々と楽しみながら保全活動を実施しているとのことでした。
知名町サンゴ礁保全対策協議会の河本起世久さんからは、昨年の大雨で相当量の赤土流出があったが、サンゴ群集への被害は軽微であったとのことでした。島内各地のサンゴ群集や海洋生物の紹介もありました。
ヨロンの海サンゴ礁再生協議会の渡辺暢男さんからは、再生協議会の取り組みやリーフチェックの紹介もありました。陸水流入海域の水質調査やコーラルチェック(シュノーケリングによるインリーフ版リーフチェック)を実施予定とのことでした。
オニヒトデ刺傷によるアナフィラキシーショック死亡事故を受け、パネルディスカッションではオニヒトデ駆除の安全対策も議論されました。過去にオニヒトデに刺され症状が重かった方は駆除に参加させていない所もあるようです。アナフィラキシーに対応した自己注射薬エピペンの紹介もありました。
充実した内容で有意義なシンポジウムになったと思います。
オニヒトデ駆除マニュアル. 酢酸の注射による駆除手法の適用オニヒトデ駆除マニュアル
平成24(2012)年3月. 環境省中国四国地方環境事務所(財団法人 黒潮生物研究財団)
海の危険生物治療マニュアル((財)沖縄科学技術振興センター)
エピペン(アナフィラキシーの症状を緩和するために自己注射する補助治療剤)マイラン製薬